2013年5月7日火曜日

くやま小児科だより 5月 「最近の気づき~高橋大輔選手のことばから~」

※今年度から園長先生の甥御さんで千葉で小児科医を開業されている久山 登医師の発行されている「くやま 小児科だより」の青梅幼稚園ブログへの転載の許可をいただきました。
子どもに関する保健情報をお届けいたします。

◆最近の気づき ~高橋大輔選手のことばから

開業して20年近く経ちますが、診療はいつも新しい発見に教えられる毎日です。最近またちょっとした気づきがありましたのでお話します。

<診断学と「開かれた質問」>

医療に診断学という分野があります。これは、症状→診察→検査という順番で病気を診断する、謎解きのスキルです。これができないと診療は始まらないので、診断のトレーニングは医師の日課です。
アメリカの診断学の本の中に「開かれた質問(open-ended question)」という聞き方が出てきます。これは、患者の自由な話を医師がさえぎらずにじっと聞くというもので、医師の方からの焦点を絞った質問はこの質問の後に行われます。アメリカの4倍の患者を見る日本の忙しい医療現場では、わかっていてもなかなか実行が困難です。

<病気とその人は切り離せない>

医師が診断学を学ぶのは、様々な訴えを、病名と結びつく特定の症状で捉え直し、整理するためです。
病気を的確に診断・治療するためには、もちろん類型化は必要ですが、病気の背後には必ずその病気を持った人間がいます。
病気をその人から切り離して「病名」や「治療」だけで固定して見ると、見落としも含めて切り捨てられるものが出てきます。
「開かれた質問」は、そんな先入観を排し、患者さんの全体像に迫って、より的確で個別的な診療につなげるために大切な姿勢なのです。

<失敗から学んだ高橋選手の言葉>

そんなことを思いながら、先日新聞を見ていた時に、今期浮き沈みしつつも大活躍した、フィギュアスケートの高橋大輔選手の素晴しい談話に出会いました。

「失敗は考え直せるチャンス。失敗や無駄が良くないという考え方が子どもの成長の芽を摘み、時に体罰に結びつく。
何でも今すぐ結果を求めなくていい。どこで生きてくるかはわからないから。」


これは彼が自分の体験から、スケート教室で子どもやその指導をする人たちに向けて語った言葉ですが、親や教師にとっても届いてくるお話ですね。
これを読んで、私の中ではふと、「開かれた質問」の話が結びつきました。


<受入れることからスタートする>

慢性の病気や治療が困難な病気の方を長く拝見していると、その向き合い方は一人一人違います。また、同じ人でも迷いがあったり、成長や環境の変化で変わってゆきます。それは医師の側からは「失敗や間違い」と見えることもよくあります。でも病気は他に替わることのできない一人一人が背負っているものですから、医師はまず患者さんを受入れることから始めなければいけません。
アメリカの診断学で「開かれた質問」が最初にあがるのは、患者さんをまず丸ごと受入れることがスタートだ、という意味でもあるのでしょう。

よい選手-指導者関係のように、失敗したり迷ったりすることを含めて丸ごと受入れ、一緒に病気や障がいと向き合っていく関係、これを心がける医師でありたいと改めて感じた、「大ちゃん」の記事でした。

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